【読書記録】セネカ「人生の短さについて」は不安な時に読んで欲しい一冊。
最近読んだ本の中で、心の整理にピッタリな一冊があったので、紹介します。
セネカ 「人生の短さについて、他二篇」訳中澤務
概要
作者は、1世紀頃ローマ皇帝ネロの家庭教師として仕え、ストア派哲学者として知られているルキウス・アンナエウス・セネカ。彼が、父親・母親・後輩に宛てた三編の手紙を収録。
- 人生の短さについて
- 母ヘルウィアのなぐさめ
- 心の安定について
セネカ自身の社会の見方・物事の考え方を織り交ぜながら、三者に向けてのアドバイスが書かれています。
人生の短さについて
役所の仕事で忙しくしている父親に宛てた手紙。多忙であることは、心がないことであると警鐘し、閑暇の中で、自分のなすべき事に時間を使うようにとアドバイスします。
母ヘルウェアのなぐさめ
ローマのから追放されたセネカが、母親に宛てた手紙。息子を心配する母親に対して、悲しみの克服には「学問」が有効であると伝えています。
心の安定について
心の不安定さをセネカに相談したセリヌスに宛てた手紙。自分のなすべきことに向かってブレない状態のことを心の安定とし、そこに向かうための具体的な助言をしています。
- 自分の仕事に打ち込み、自分の義務を果たすこと。状況が悪化したら、仕事から離れて閑暇の中に過ごすこと。
- 仕事を選ぶときは、適性を考えること。終わらせられる仕事を選ぶこと。一緒に過ごす仕事をする人は、自分の時間を捧げたいと思う人を選ぶこと。
- 質素倹約。
- 置かれた状況に不満を言わない。運命に警戒し、備えよ。
- 無意味で無益な仕事をしないこと。逆境に動じない。
- 人の欠点は冷静に受け入れること。
- 正しい人間が不運に見舞われても、絶望しないこと。
- 自分を取り繕わない。
- 人との交わりに疲れたら、孤独に逃げること。
- 心が疲労したら、気晴らしを与えて、回復すること。
「人生の短さについて」のオススメポイント
1. 時間の使い方に向き合うことができる
自分のやりたいことに向き合うきっかけになります。以前は、仕事で忙しいことを何も思っていませんでしたし、むしろそれが良かったとも思っていました。しかし、この本を読んでから、今している事に対して、「これは作業としては意味があるけれど、自分の人生にとって意味のある事なのか?」と懐疑的になり、他にも、「何のために時間を使いたいのか。」「誰のために時間を使いたいのか。」と考えるようになりました。
自己啓発本の中には、「時間や人生でやりたい事」について記載がある物も多いですが、怪しい団体の勧誘に使われることも多く、苦手意識がありました。この本は、2000年間伝えられてきた助言だとふまえるとスッと頭に入ってきて、何故か自分の行動を見直してみたくなるものです。
2. 不安や自己嫌悪への対応が具体的に書かれている
最も実践的で具体的なアドバイスが書かれているのは、「心の安定について」。前半の心が不安定な状態や自己嫌悪の原因に対するセネカの分析は鋭く、読んでいて苦しくなってきますが、その分、後半の仕事の選び方や、ライフスタイルについてのアドバイスは、「なるほど」と納得感がありました。
3. 悩みが軽減される
2000年以上の前の人も、同じようなことについて悩んでいて、自分の悩みが小さなもののように思えてきます。「心の安定について」のセリヌスの悩み、すごく共感できます。自分の軸を持ち強くありたいと思う一方で、社会的ステータスや承認欲求に惑わされたり、怠惰な自分に対して、自己嫌悪に陥ったり。
「どうせみんな悩んでいるんだから、深刻に捉えなくてもいいか。」と軽い気持ちになりました。
まとめ
セネカの「人生の短さについて」は、不安になった時に、立ち止まって考えさせ、「無駄にしている時間はないのだ。」と一喝してくれる一冊でした。ぜひ手にとって読んでみてください。